2025年度秋学期

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猛暑が続いたこの夏、学生たちは国内外のサービス・ラーニング・プログラムに参加し、それぞれの地域で多様な学びと出会いを経験しました。

国際サービス・ラーニングには67名が参加し、インド、フィリピン、インドネシア、南アフリカ、そして教員主導コースとしてタイでも活動が展開されました。 コミュニティ・サービス・ラーニングでは6名の学生が、長崎市、栃木県那須塩原市、宮城県石巻市、福岡県北九州市にて、それぞれが地域の方々との関わりの中でサービス活動に取り組みました。

活動を終えた学生たちは、秋学期の授業「サービス活動の振り返りと共有」で、自らの経験を言葉にし、仲間とともに学びを深めました。

本号では、参加学生の声、受入れ先からのメッセージ、サービス・ラーニング担当教員による視察レポートを通して、2025年夏のサービス・ラーニングの軌跡をお届けします。

Contents

  • 2025年度コミュニティ・サービス・ラーニング
    ・参加者の声
    ・学生受入団体の声
  • 2025年度国際サービス・ラーニング
    ・参加者の声
    ・海外パートナ一大学の声
    ・南アフリカ視察
  • SLアンバサダー 新メンバー紹介
  • SL センター長からのメッセージ
  • 編集後記

2025年度 コミュニティ・サービス・ラーニング

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ICU コミュニティ・
サービス・ラーニング
コーディネート担当
山田 陽子

この夏、6名の学生がコミュニティ・サービス・ラーニングに参加しました。 長崎で平和に関する活動を通して学びを深めた学生、 多国籍の仲間と寮生活を送りながら農作業に取り組んだ学生、 子ども向け体験プログラムのサポートを通じて地域の方々や子どもたちと関わった学生、 経済的困難や社会的孤立を抱える方々を支援する団体で、多くの出会いとつながりを感じながら活動した学生など、 それぞれが異なる現場で、多様な人々との関わりを通して貴重な学びを得ました。

学生たちが多くの気づきを得ることができたのは、受け入れ先や地域の皆さまの温かいご協力とご支援のおかげです。 心より感謝申し上げます。





参加者の声

2025年度の参加者「コミュニティ・サービス・ラーニング体験談」をみる

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野中 優那
 公益財団法人
長崎平和推進協会
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堀口 日向穂
公益財団法人
長崎平和推進協会
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齋藤 未羽
学校法人 アジア学院
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日比野 花
公益社団法人MORIUMIUS
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蜷川 はる
NPO法人 抱樸

学生受入団体の声

今年も多くの団体の方々にご協力をいただきました。受け入れ団体の方々からコメントをいただきましたのでご紹介いたします。

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公益社団法人MORIUMIUS
(モリウミアス)


公益社団法人MORIUMIUS

MORIUMIUSでは、自然や地域の営みに寄り添いながら、子どもたちと共に多様な活動に取り組んでいます。1年間滞在する漁村留学生とは、食事づくりや掃除、行事の準備などを共に行い、まるで家族のような関係を築いています。

地域の方々とも深く関わり、浜ではウニ剥き作業を手伝いながら漁の知恵を学び、ローズガーデンでは震災の記憶に触れる貴重な時間をいただきました。こうした日々の関わりを通して、世代や立場を超えたつながりの力、そして「共に生きる」ことの尊さを強く感じています。

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浜での活動では、地域の方々と一緒にウニ剥き作業を行っています。贈答用のウニを一つひとつ丁寧に剥き、身を崩さず美しく仕上げる繊細な作業です。手を動かしながら地域の方々から漁の工夫や季節の話を伺い、お茶っこを囲んで笑い合うなど、温かな交流の時間にもなっています。作業を通じて、海の恵みを大切に扱う心や、地域に息づく人のつながりの豊かさを実感できる活動です。

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NPO法人 抱樸

NPO法人 抱樸

困窮状態にある子どもと家族への包括的な支援をしている部署にて活動していただき、困窮世帯の子どもや若者、その家族に対する支援(集合型学習支援、不登校ひきこもりの子どもたちへのアウトリーチ支援、食料支援、社会参加支援など)に関わっていただきました。
生活困窮や虐待、不登校など複雑な背景を持つ子どもたちに対し、言葉かけや関わり方を考慮しながら対応する姿が見られ、子どもたちも安心して、楽しそうに過ごすことができました。
日常ではあまり関わることのない困窮状態の子どもや若者、その家族の様子や支援の課題等を大学生の目線で見ていただくことができ、私たちも勉強させていただきました。

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地元企業の工場見学
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買い物体験

2025年度 国際サービス・ラーニング

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ICU 国際サービス・ラーニング コーディネート担当
特任助教 黒沼 敦子

今夏も、SLCの海外パートナー大学4校に計58名の学生を派遣しました。さらに、キム・アレン教授による教員主導型科目の一環として、タイ・マヒドル大学のプログラムに9名が参加し、総勢67名が約1か月の国際サービス・ラーニングを通して多様な現場で学びを深めました。

フィリピンのシリマン大学では16名が、地域の子どもや青少年との日々の交わりを通して、人との関係の中で学ぶことの意味を実感しました。インドのレディ・ドーク大学には11名を派遣し、教育支援や寮生活を通して自らの常識や枠組みが揺さぶられる経験を重ねました。インドネシアのペトラ・クリスチャン大学では16名が、他のアジアや欧州の参加者と共にイスラム教徒の集落にホームステイし、異なる価値観の中で活動の在り方を模索しました。南アフリカのケープタウン大学へは15名が参加し、環境教育や社会構造の背景にある歴史と向き合いながら学びを深めました。

各大学との連携は年々深化しており、本学のミッションである「神と人とに奉仕する有為の人材を育成する」教育を体現する場となっています。今後も、教育プログラムの質を高め、より持続的な国際連携を進めてまいります。





参加者の声

2025年度の参加者「国際サービス・ラーニング体験談」をみる

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細谷 怜有
Silliman University
フィリピン
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今西 はな
Lady Doak College
インド
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青山 釉衣
Petra Christian University
インドネシア
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赤尾 拓飛
University of Cape Town
南アフリカ
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宮川 光
Mahidol University International College
タイ(教員主導コース)

海外パートナ一大学の声

今年も多くの海外パートナ一大学の方々にご協力をいただきました。パートナ一大学の方々からコメントをいただきましたのでご紹介いたします。

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iCOP 2025
コーディネーター
Denny Haryanto 氏

インドネシア Petra Christian University

社会を変える力

2025年7月から8月にかけて、インドネシア・東ジャワ州モジョケルト県の6つの村で、6か国9大学から集まった合計153名の学生が、地域社会への奉仕活動に取り組みました。 International Community Outreach Program (iCOP)2025プログラムのもと、相互学習、文化交流、そして地域のエンパワーメントを目的とした旅に共に参加しました。
このプログラムを通じて、参加学生たちは農村の暮らし、社会の仕組み、そして持続可能な地域づくりについて深く理解する機会を得ました。学生たちは地域住民と積極的に関わりながら、それぞれの村における重要課題を特定・分析し、解決に向けた取り組みを行いました。
モジョケルトの村々は肥沃で美しい自然に恵まれていますが、その環境の持続可能性を守ることが求められています。iCOPでは廃棄物管理や環境保全に関する取り組みとして、小学生向けの環境教育ワークショップや、雨水の地中浸透を促すバイオポアの設置などを実施しました。また、安全で清潔な飲料水へのアクセスを確保するため、地域の浄水フィルターの修復にも貢献しました。
文化の継承もプログラムの重要な柱の一つでした。学生たちは伝統舞踊や音楽のワークショップに参加し、ジャワの伝統楽器「ガムラン」購入のための募金活動にも取り組みました。これらの活動を通じて、異文化理解が深まり、地域の知恵や文化遺産への敬意が育まれました。
iCOPを通じて国連の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献、特に「質の高い教育」「安全な水と衛生」「持続可能な地域社会」「環境保全」の重要性を再確認しました。すべての人にとってより良く、より包摂的で持続可能な未来を目指して、私たちは共に歩み続けます。

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「ガムラン」というジャワの伝統音楽を演奏しました。ガムランはオーケストラのようなもので、1人が1つの楽器を演奏するだけでは成り立たず、ケノン、ケンダン、ゴング、ボナン、ガンバンなど、さまざまな楽器を用いてチームで演奏します。この活動は、地域の文化を知ってもらうだけでなく、村の若い世代に自分たちの文化を愛してもらうことを目的としています。
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スンバルジャティ小学校でごみ管理についての教育プログラムを実施しました。子どもたちは、自分たちのごみをどのように管理すればより良い生活が送れるか、村の生態系を守るために何ができるかを学びました。
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ジェンブル村で川の清掃を行いました。川は村の人々にとって重要です。iCOPを通じて、プログラム参加者、NGOや地元の人々が協力して、川の不燃ごみを清掃しました。
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ディレム小学校で語学のクラス風景です。 各大学からの参加者が、韓国語、日本語、オランダ語などの外国語を児童に紹介しました。
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アカデミック
コーディネーター
Andrew Petersen 氏

南アフリカ University of Cape Town

体験的学びを通じて地球市民を育む

ケープタウンで実施された2025年度のICUサービス・ラーニング・プログラムでは、2年生の学生たちが、学術的探究と環境・社会問題への実践的な取り組みを通じて、理解を深める貴重な体験をしました。このプログラムは、グローバル・シティズンシップ教育(GCE)と持続可能性のための教育(EfS)の理念に基づいており、世界的な課題と地域の対応についての理解を深めることを目的としています。

学生たちは、カーステンボッシュ国立植物園内にあるゴールドフィールズ環境センターで体験型学習活動に参加しました。これらのセッションでは、環境保全と対話型教育が重視されました。学生たちは、南アフリカ国立生物多様性研究所(SANBI)と協力し、既存の環境教育活動を支援するとともに、食料安全保障やジェンダーに基づく暴力に取り組むカラス財団などの地域団体とも連携しました。

プログラムの学術的要素は、GCE と EfS の交差点に焦点を当て、これらのフレームワークが現実世界の状況にどのように適用されるかを学生が考えるように促します。ディストリクト・シックス博物館やイジコ博物館への訪問を通じて、南アフリカの複雑な歴史と現在のコミュニティへの影響についての理解が深まりました。

教室での学びを超えて、学生たちは地域社会へのアウトリーチ活動にも積極的に貢献しました。文化交流を促進し、学校での学習活動を支援し、環境意識や異文化理解を促進する授業も実施し貢献しました。

このプログラムは学生に非常に大きなインパクトを与え、広い視野と強いグローバルな責任感、そして体験的学習への深い理解を持って帰っていきました。2025年のサービス・ラーニング・プログラムは、ICUが社会的課題に積極的に取り組むグローバルな視野を持つ人材の育成に力を注いでいることをあらためて確認する機会となりました。

今後もこの意義のある取り組みが続いていくことを楽しみにしています。

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南アフリカ視察

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ICU 国際サービス・ラーニング コーディネート担当
特任助教 黒沼 敦子

8月上旬、南アフリカのケープタウン大学(UCT)を訪問し、国際サービス・ラーニング・プログラムの最終週に合流しました。今回は2度目の南ア訪問で、UCTの先生方とファイナル・リフレクションを共同で実施し、最終発表にも同席できたことが大きな収穫でした。学生がどのように経験を言語化し、歴史や社会の文脈に自らの立ち位置を照らし合わせていくのか、そのプロセスを間近で確認することができました。また、パートナー大学の皆様が、サービス活動の場を提供してくださるにとどまらず、学生の学びに積極的に伴走してくださっていることを実際に目にし、そのご尽力を改めて実感しました。

現地では、環境教育センターや地域の博物館・史跡(District Six、Slave Lodge等)を訪れ、持続可能な開発のための教育やグローバル市民教育の観点を取り入れたサービス活動の深化について意見交換を行いました。学生の活動を単なる奉仕や支援にとどめず、"Engaged Learning"(関与を通じた学修)として教育的に深化させていく方向性を共有できたことは大きな成果でした。また、UCTが綿密なリスク評価と丁寧な指導体制を整えていることを確認し、安全面を含む運営面でも互いの信頼を一層深める機会となりました。

さらに、Andrew先生ご夫妻のご案内で、大西洋と広大な大地が織りなす自然の息吹に触れる機会を得ました。西ケープの雄大な自然と太古からから続く歴史に包まれながら、人と場との出会いから学ぶというサービス・ラーニングの原点を体験する忘れがたい旅となりました。この経験を糧として、今後のサービス・ラーニングの教育実践に生かしていきたいと思います。

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ケープタウン大学での学生のファイナル・プレゼンテーションにて。
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波濤を超えてこの地を目指した人々が魅了されたアフリカの大地、西ケープ州ボクバイ自然保護区にて。
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サン(ブッシュマン)族の文化と歴史を継承・発信する教育文化施設、西ケープ州の!Khwa ttu(クワトゥ)にて Andrew 先生と。

サービス・ラーニング アンバサダー 新メンバー紹介

サービス・ラーニングアンバサダーはICU学内外にサービス・ラーニングを広める活動に関わる現役のICU学生です。今年サービス・ラーニングに参加したICU生のうち、13名が新たにメンバーに加わりました。

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2025年度ケープ・タウン
大学プログラム参加
加藤 璃穏

新メンバー 加藤 璃穏

 私はこの夏、南アフリカにあるケープタウン大学(UCT)のサービス・ラーニング・プログラムに参加しました。約1カ月間、南アフリカの持続可能な開発のための教育(ESD)と地球市民教育をテーマに、学びとサービス活動を組み合わせながら、植物園や博物館、地域団体や学校など多様な場で活動に参加しました。特に印象に残っているのは、小学校、高校での活動です。生徒や教師との交流を通して、現地に行かなければ気付くことのできなかった課題や可能性を知ることができ、多くのことを学びました。社会政治的な背景と地域の人々の取り組みに直接触れたことは、私にとって一生忘れられないかけがえのない経験であり、多くの気づきを与えてくれたと感じています。活動を終えて、サービス・ラーニングをもっと多くの人に知ってもらいたい、そして魅力を広めたいと思い、アンバサダーとして活動することを決意しました。今後はこの経験を多くの人に共有し、たくさんの挑戦を少しでも後押しできる存在になりたいと考えています。




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現地高校での地震についての授業。
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タウンシップのフードバンクでの活動。
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高校のカルチャーナイトでソーラン節を発表。
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植物園で湿地帯のしくみを学びながら実験。

SL センター長からのメッセージ

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加藤 恵津子

加藤 恵津子 教授

文化人類学
サービス・ラーニング・センター センター長

日本各地(6名)、世界各地(67名)のサービス・ラーニングに行ってきた皆さん、お帰りなさい!秋の振り返りを終え、現地での「ヤバい」体験(暑い、下痢した、何をやればいいの等、ほんとにヤバいほう)は、言語の枠組みが与えられた頃でしょう。でも皆さんの体験の真の意義は、口頭発表やレポートの外にあるのかもしれません。今後、何かの拍子に突然よみがえる風景、人びとの表情や声...その時は気にも留めなかったことが愛しく思える。「また行こう」。あの場所へ、または似た場所へ。皆さん一人ひとりがそう思ってくれたら、サービス・ラーニングは成功です。今年は宮城県石巻市の公益社団法人モリウミアスとの連携が始まりました。貧困、差別、環境などに加え、災害・復興、地域振興なども世界共通のテーマでしょう。皆さんがこれから出会うさまざまな場所に共通項を見出し、小さな行動を起こしてくださったら嬉しいです。

編集後記

RY.png​この夏、久しぶりに海外を訪れ、新しい人々や文化、価値観に出会いました。 一歩外に踏み出すことで、自分の「当たり前」が揺らぎ、柔軟性と寛容性の大切さを改めて実感する、貴重な機会となりました。

YY.pngこの夏、オープンキャンパスで多くの高校生と出会いました。自分の興味分野をキラキラした目で語る姿や、経験者の話に耳を傾ける真剣な表情に、私も元気をもらいました。未来のICU生にも、SLを通して出会いや学びの喜びを感じてもらえたら嬉しいです。

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8月に箱根を訪れたが大変な天気だった。海風で傘は役に立たず、横殴りの雨に濡れながら宿へ到着。着替え後、窓から風と雨に揺れる山の木々を眺め、外出できない分、静かな時間を過ごすことができた。

MY.png町開きから25年、目玉イベントに成長したわが町の夏祭りを支えるスタッフとして参加した今年の夏は、たくさん汗をかきながら準備、出店運営、片付け、警備ほか前向きに働く地域の方々に出会いました。フィナーレを飾る花火を見上げ、祭りが地域の人々をつなぐ大切な行事のひとつであることにあらためて気付かされました。