2025年度冬学期
photo: ICU図書館の河津桜
冬学期の始まりとともに、サービス・ラーニング・センターでは今年も Japan Service-Learning(JSL) Program を実施しました。インドとフィリピンから4名の学生を迎え、地域の皆さまやICU生と温かい交流を重ねながら、2週間のサービス活動を行いました。キャンパスや街が少しずつクリスマスの彩りに包まれていく時期に、参加学生が日本の文化や習慣に触れながら活動を進め、さまざまな発見や学びを積み重ねていく姿がとても印象的でした。
本号では、このJSLプログラムを中心に、参加した留学生や、受け入れ団体の皆さま、そしてボランティアとして関わったICU生の声をご紹介しています。後半では、卒業を控えたSLアンバサダーが、これまでのSLでの学びやこれからの歩みについて語ってくれました。
サービス・ラーニングで得られた出会いや学びが、学生一人ひとりのこれからの歩みを力強く支えてくれることを願っています。今後も、さまざまな活動を通して生まれたつながりを、皆さまとともに大切に育み、発展させていければ幸いです。
Topic
Contents
- JSL参加留学生からの声
- ボランティアとしてJSLに協力したICU生の声
- JSL受け入れ団体の声
- JSLプログラムのコーディネーター
- 卒業生「ICUを振り返って」
- SL センター長からのメッセージ
- 編集後記
JSL参加留学生からの声
Jam Francine G. Gramatica
フィリピン シリマン大学
私の背景を少しお話しすると、現在ソーシャルワークを専攻していますが、これは私にとって思い切って飛び込んだ挑戦でした。この専攻を通して、サービス・ラーニングについて多くを学びました。大学1年生の頃はビジネス系の学科に所属していて、将来は企業で働く自分を思い描いていました。しかし状況が変わり、ソーシャルワークへと転向しました。
ソーシャルワークの学生として過ごした数年間、私は主に授業の一環としてサービス・ラーニング活動に参加してきました。しかし、2025年の国際サービス・ラーニング・プログラムに参加したICU生たちの「シリマン・バディ」として関わった経験が、私のサービス・ラーニングに対する見方を大きく変えてくれました。だからこそ、2025年のJapan Service-Learning(JSL)プログラムの募集を知ったとき、最初こそ迷いはあったものの、「失うものは何もない」と思って挑戦することにしました。
JSLプログラムでの経験は、これからの私の職業人生にも、私生活にも、深く刻まれていくと思います。ICUコンポストの活動を通して、コンポストが持続可能性の向上に実際に貢献していることに気づかされました。また、日曜日の礼拝にも参加し、地域の人々の精神的な営みに触れることができました。さまざまな学校での活動では、日本の教育制度を垣間見ることもできました。授業中の生徒の様子や、先生たちの多様な指導方法を観察できたのは貴重な体験でした。特にフリースクール コスモでの経験は、社会の常識にとらわれず「違っていてもいい」ということを実感させてくれました。さらに、ちQ人や興望館のような地域活動には心を打たれました。地域の方々が、若い世代の心と考え方を育てるために積極的に関わっている姿に感動しました。ホームビジットでは、家族の一員のように迎えてもらい、一緒にゲームをしたり、食事を囲んでお話ししたりと、心温まる時間を過ごしました。帰国後もホストファミリーが恋しいくらいです。高所恐怖症の私にとって、東京スカイツリーの見学は少し勇気のいるものでしたが、眼下に広がる景色はとても美しく、感動的な体験となりました。自由時間には一人で東京を散策しました。東京ドームや渋谷を訪れ、中でもディズニーストアが一番のお気に入りの場所でした。また、プログラム参加メンバーと一緒に東京ディズニーランドにも行きました。強風と雨でとても寒い日でしたが、それでも一日中楽しめました。あまりに楽しく、寒さを忘れてしまうほどの一日でした。
全体として、JSLプログラム2025は、全く異なるコミュニティと文化に触れる実り多い体験の機会となりました。もしまたチャンスがあるなら、もっと日本の地域や文化を探求したいと思います。短期間のプログラムではありましたが、活動の枠を超えて多くのことを学びました。そして何より、この経験は、知恵と思いやり、そして文化的な感受性を持った人間になるための大きな一歩となりました。
Thomas Dave Rixan H. Garganian
フィリピン シリマン大学
こんにちは (Konnichiwa)!
JSLの一員として日本を体験できたことは、私の学生生活という物語の中でも特に意義深い一章となりました。新しい国への旅として始まったこの経験は、自己成長、文化への敬意、そして生涯続くつながりへと発展する旅となりました。
日本では、規律、礼儀、そして地域社会への深い思いに触れることができました。JSLを通じて、日本の文化に深く触れることができました。時間を守ることや謙虚さといった日本の価値観を理解するところから、伝統と現代が美しく共存する様子を目にするまで、多くの学びがありました。電車での移動、共に囲んだ食事、文化交流のひとつひとつが、教室だけでは学べない大切なことを教えてくれました。
この経験をさらに特別なものにしてくれたのは、出会った人々です。JSLは、異なる背景を持つ学生たちがつながり、支え合い、共に成長できる場を作ってくれました。私たちは日本についてだけでなく、自分自身についてもー自分の強さ、適応力、多様性を受け入れる姿勢ー多くを知ることができました。
この経験を通して、私はさらに感謝の気持ちを持ち、心を開き、自分の殻を破って前に進む自信を持てるようになりました。学びとは本の中だけでなく、周りの世界に耳を傾け、観察し、真剣に向き合う中でこそ得られるものだと気づかされました。
このような貴重な経験を可能にしてくれたJSLに心から感謝するとともに、私たちが国際的な視点を持ち、文化に敏感で、社会的に責任ある人へと成長できるよう導いてくれたことに深く感謝しています。日本はこれからも私の心の中で特別な存在であり、この旅で得た教訓は、どこへ行っても私の中に生き続けるでしょう。
Arigatou gozaimasu, JSL。一生忘れられない経験をありがとう、JSL。
Bala Sri Skanthini J.M.
インド レディ・ドーク・カレッジ
日本でのJSLプログラムは、学術的な学びと深い文化体験が融合した、特別で実りある学びの機会となりました。国際的な理解を深めることを目的としたこのプログラムでは、日本の社会、言語、伝統に実践的かつ意味のある形で触れることができました。
このプログラムの中でも特に意義深かったのは、「体験的な学び」を重視していた点です。教室内の学習にとどまらず、日常生活の中での観察や交流、振り返りを通じて学ぶことが大切にされていました。たとえば、公共交通機関の利用、地元の人々とのふれあい、文化活動への参加など、日々の体験がそのまま学びの場となり、適応力や自立心、異文化間コミュニケーション能力が育まれました。
また、日本の教育のあり方や仕事に対する価値観、規律・敬意・協働の精神といった社会的価値観についても理解を深めることができました。学生や先生方、地域の人々との交流を通じて、多様な視点や考え方に触れ、相互理解が深まりと国際的な視野も広がりました。
さらに、JSLプログラムは学術的な面だけでなく、自分自身に大きな変化をもたらしました。
異国での生活は自分の慣れた環境から一歩踏み出す挑戦であり、自分を成長させる経験でした。問題解決能力や自信、文化的な感受性が養われ、日本の豊かな歴史と現代の革新的な側面の両方に触れることで、日本という国の姿をバランスよく理解することができました。
総じて、日本でのJSLプログラムは単なる教育旅行ではなく、心と知識の両面を育む総合的な学びの旅でした。視野を広げ、生涯にわたって役立つスキルを育み、文化への理解と国際的な市民意識を深める、忘れがたい経験となりました。
Zafira M.
インド レディ・ドーク・カレッジ
Japan Service-Learning(JSL)プログラムは、非常に充実した、私自身に大きな変化をもたらす経験となりました。日本の地域社会と関わりながら、文化、サステナビリティ、そして社会的責任について貴重な気づきを得る特別な機会を与えてくれました。人々との交流や実践的な活動は意義あるもので、それらを通してサービス(奉仕)と協働の真の価値も学ぶことができました。
堆肥づくりや防災に関する活動に参加したことで、環境への責任や地域安全の重要性を理解することができました。また、規律ある取り組みや協力が、社会の円滑な運営にどれほど貢献しているかを肌で感じました。これらの経験は、同様の取り組みを自分の地域でどのように活かせるかを考えるきっかけとなりました。
プログラムの中で特に印象的だったのは、人々の温かさやおもてなしの心です。ホームビジットや地域の方々との交流を通じて、文化の違いがあっても歓迎され、大切にされていると感じ、自分が受け入れられていることを強く感じるとことができました。こうした体験を通じて、共感、敬意、そして人と人とのつながりの大切さを改めて学びました。
JSLプログラムのおかげで、自分自身も大きく成長できたと感じています。初めての国で自立して生活することで、自信、コミュニケーション能力、適応力が高まりました。今回の経験で、視野も広がり、これからの学びや地域との関わりに活かしていきたいという気持ちが一層強くなりました。
ボランティアとしてJSLに協力したICU生の声
實原 みちる
2024年度インドネシア ペトラ・クリスチャン大学 にて活動
JSLのボランティアとして12月に約2週間活動しました。今回は、その中でも特に印象に残った学びについて書きたいと思います。
活動を通してまず気づいたのは、日本で留学生と交流したからこそ見えた「文化」の存在でした。これまでインドネシアでのSLなど国外で文化に触れる機会は多くありましたが、そこで話題になる流行や教育制度のような「言葉にしやすい文化」と、日本で気付かされた、日常に溶け込みすぎて意識していなかった文化はまったく違っていました。「日本に来て驚いたこと」などを留学生に尋ねる中で、自分にとって当たり前の習慣が当たり前ではないと知る体験が何度もありました。また、留学生が日本に対して偏ったイメージを持っていたとしても、実際の生活や体験を通してそれを伝え直すことができた点も印象的で、日本で文化交流を行う意義を強く感じました。他者の視点を通して自分の"当たり前"を見直す機会にもなりました。
次に学んだのは、文化をひとくくりにして語る危うさです。相手の国について自分が知っている知識を話してみても、返ってくる反応が想像とは全く違うことがあり、「一つの国を一つの特徴で語ることはできない」と実感しました。国籍が同じでも、育った環境や価値観は大きく異なります。相手を"国"として見る視点と、"一人の人"として向き合う視点の両方が必要であり、それは自分が日本について話すときにも同じだと気づきました。日本人の感じ方も多様で、「日本ではこうだ」と言い切れることは意外と多くありません。
さらに、文化を交換するときの姿勢についても学びました。留学生の質問の中には偏っていると感じるものもありましたが、その瞬間に身構えてしまうと気づきは得られません。「なぜそう思ったのか」「どこでその情報を得たのか」を知ろうとする姿勢が対話の第一歩になると感じました。JSLという「学び合う」前提の場だったからこそ、友達同士では話しづらかったことも率直に語り合うことができ、違いを前提にしているからこそ安心して質問し合えました。同時に、間違いがあれば正直に謝ることの大切さも実感しました。
今回の活動を通して、日本で国際交流をすることは、自分の価値観や育った環境を見直すきっかけになると深く感じました。これまで国際交流といえば海外というイメージが強かったのですが、国内での交流にも豊かな学びがあることに気づきました。次は、JSLで出会った友達の国を訪れ、その人が暮らす環境や価値観を自分の目で確かめてみたいと思います。新しい楽しみが一つ増えました。
多くの気づきを与えてくれたJSLに参加できて、本当によかったです。
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鈴木 乙葉
2025年度フィリピン シリマン大学 にて活動
私は2025年度の夏に国際サービス・ラーニングでフィリピンを訪れました。そこで発展途上国の人々の生活の中に入り込むことで、座学やデータだけでは見えてこない多くの学びを得ることができました。
この経験を特別なものにしてくれたのは、現地でともに活動したICU生やシリマン大学生、訪れた施設やコミュニティの人々、スタッフ、先生方、との交流です。人々との関わりを通して、現地の状況を理解し、それに沿って活動を考え、自分の興味関心とも結びつけて活動を行いました。だからこそサービス・ラーニングにおいて、人々との交流が必要不可欠だと感じています。
そのような背景から、今回インドとフィリピンから4人の学生が、JSLのためにICUにくると聞き、少しでも彼女たちの日本での経験が充実したものになるよう力になりたいと思い、ボランティアとして参加しました。
私は一緒にICU compostや、キャンパスツアーなどの活動を共にし、日本やICUについて共に学ぶだけでなく、他愛もない会話やショッピングも楽しむこともでき、サービス・ラーニングをまた体験できて、とても楽しい時間となりました。
4人の学生の最終プレゼンテーションでは、日本での学びや活動、心境の変化を振り返っており、私たちボランティアや先生など出会った人々との関わりが、彼女たちの経験の一部になっていたことを感じ、とても嬉しく思いました。特に、日本の社会課題を自国の文化と参照しながら考察などしていた視点は新鮮で、さまざまな国の視点から日本を再認識する貴重な学びともなりました。
新しいお友達との出会いも含め、とても心に残る、貴重な経験となりました!
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JSL受け入れ団体の声
「ちQ人ちゃん」
西川 好美 氏
ちQ人
フィリピン出身の留学生とICU生をお迎えし、ホームビジットを行いました。「おにぎりパーティ」「抹茶体験」「カードゲーム」を通して、日本の家庭での何気ない日常を一緒に過ごしました。おにぎりパーティでは、好きな具材を選んで自分で握っていただくスタイルで、日本ならではの具材から変わり種まで、様々な味に挑戦して楽しまれていました。フィリピンの食文化や日本人の時間の使い方など、多様な視点で会話が弾みました。着物に興味があるとのことで、実際に浴衣も着ていただきました。短い時間でしたが、日本の居食住文化を肌で感じていただけたようで、終始笑顔が印象的でした。また、中学生の息子にとっても英語で交流する貴重な機会となり、身近なやり取りを通して親近感が生まれ、互いの世界が広がる良い経験となりました。今回の出会いをきっかけに、今後も多くの経験や交流へとつながっていけば嬉しく思います。
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大山 貴史 氏
フリースクールコスモ高等部
フリースクールコスモ高等部は、三鷹市にある高校生年代の学びの場です。今年度もJSLの学生さん4名に来ていただき、調理のプログラムや併設するコミュニティベーカリー「風のすみか」での作業体験に一緒に取り組みました(一部、中等部でも活動して頂きました)。
交流に向けては「英語は使うのはやっぱりハードル」と言葉にしていたフリースクールのメンバーたちでしたが、活動後には「やっぱり聞き取れない部分は多かったけど、調理やパンの袋詰めを一緒にやるのはうまくできて、"なんとかなるかも"とは思った」「去年も参加はしていたけど"遠巻き"だった。今年はメンバーが少ないから自分もやるしかなかったけど、やり取りはできた感じがする」と振り返っていました。
その感想を聞きながら、最初の時は「遠巻き」で様子を見ていても、次の時には「中心的に」関わっていくようなことも、こうして継続的にICUから留学生を受け入れさせて頂くことで可能になると感じました。
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佐橋 恵子 氏
晃華学園小学校
私たち晃華学園小学校では、ICUより留学生の皆様をお迎えし、異文化理解を深める貴重な時間をいただいております。この交流を通して、子どもたちは単に異なる国の文化を「知る」だけでなく、新たな発見をきっかけに、その背景にある暮らしや価値観へと思いを巡らせるようになります。同時に、自分たちの文化を改めて見つめ直す機会ともなっています。
ICTが教育現場に広く浸透する現代においても、人と人とが直接向き合う体験が持つ力の大きさを、私たちは何度も実感しました。普段は無口な児童が、言葉にできない思いを胸に留学生へ近づき、けん玉の遊び方を身振りで伝えようとする姿が見られました。少しずつ心を通わせていくその様子は、まさに実体験から生まれる学びであり、今の時代にこそ大切にしたい教育の姿だと感じています。今年もこのような貴重な機会をいただけたことに、心より感謝申し上げます。
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木津 まと 氏
ICU Compost
今年も昨年度に引き続き、フィリピンとインドから2名ずつの学生たちがコンポストの活動に来てくれました!
私たちの活動は、寮で大量に捨てられる生ごみをどうにかできないだろうかという疑問から始まりました。SLにおけるアクティビティ系のプログラムとして計2回参加していただき、寮を紹介しながら回ったり、捨てられた野菜をシャベルで小さな片に砕いたりと、ゆっくりした雰囲気のなかで交流を深めました。
印象的だったことは、初めてコンポストをする彼らのユーモアあふれる視点です。生ごみと落ち葉を混ぜて整形する工程を料理に見立て、仕上げの落ち葉を振りかけながら「We're ready to serve!」 と茶目っ気たっぷりに楽しんでました。バケツを洗ったときの白濁汁をミルクティと表現していたのも忘れられません。一人でやるには大変だし、はじめは匂いやビジュアルにぎょっとすることもありますが、みんなのおかげで忘れがたい大切な時間となりました。
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JSLプログラムのコーディネーター
山田 陽子
コミュニティSL コーディネーター
12月8日から22日の2週間、Japan Service-Learning Program(JSL)を実施し、インドのレディ・ドーク大学とフィリピンのシリマン大学から4名の学生を迎えました。滞在中は、東小学校(小金井市)および晃華学園小学校(調布市)での英語授業サポートやフリースクール コスモ(三鷹市)での国際交流、地域団体 ちQ人(小金井市)主催のイベント参加やホームビジットなど、多様な活動に取り組みました。また、学内では学生団体 ICUコンポストの活動や「三鷹大沢わさび」の保全活動を通して環境への取り組みに触れました。さらに、社会福祉施設 興望館(墨田区)訪問や東京スカイツリーへのエクスカーションも行いました。
参加した4名の学生は、来日初日からすぐに打ち解け、終始よいチームワークを見せてくれました。2週間という短い期間にもかかわらず、活動での経験を丁寧に振り返り、日本と自国の違いや共通点、その背景にある文化や社会課題にも思いを巡らせていた姿が印象的です。地域の子供たちとの交流では、言葉の壁を越えて心が通う場面が見られ、交流のあたたかさを改めて感じる時間となりました。
改めまして、留学生を温かく迎えてくださった受け入れ先の皆さまをはじめ、本プログラムを支えてくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。
黒沼 敦子 特任助教
教育学、サービス・ラーニング・コーディネーター
本年度のJSLプログラムも、日本の学校文化や教育課題、サステナビリティをテーマに実施されました。リフレクション・セッションでは、参加学生が自国の社会や文化と比較しながら、共通する問題意識と、それぞれの社会や文化に根ざした背景の違いについて対話を重ねました。インドおよびフィリピンの学生が、競争的な社会環境の中に身を置きながらも、自らの知識や経験をどのように社会に活かし、人々のために役立てることができるかを真摯に考えている姿が印象的でした。また、日本社会に対して理想的なイメージを抱いていた学生たちが、日本社会にも多様な課題があることを知り、グローバル社会に生きる一人として社会課題に向き合うことの大切さを実感する機会となりました。本プログラムが、関わったすべての方々に新たな気づきと学びをもたらしたことを願っております。
卒業生「ICUを振り返って」
2026年3月の卒業式では多くのICU生がキャンパスから巣立ちます。そのうち、サービス・ラーニング(SL)アンバサダーとして活動した学生の一部をご紹介します。彼らは多くの高校生や在学生にサービス・ラーニングを広める活動に参加してくれました。
※SLアンバサダー:国内外で30日間のサービス活動を経験し、大学内外にサービス・ラーニングを広める活動に参加した学生
久世 美子
2023年度長崎平和推進協会(長崎県) にて活動
2023年に長崎でのサービス・ラーニングに参加して、早2年が経ちました。教育学を専攻する友人と2人で訪れた長崎での1ヶ月には、たくさんの思い出があります。学芸員課程を履修していた私は、長崎原爆資料館の展示の改良のために何が必要かという問いを持って臨みました。様々な震災遺構をめぐり、博物館や教会にも訪れ、長崎の歴史を学びました。学ぶだけでなく、長崎の同年代の学生たちと長崎の夏を盛り上げる活動をしたり、ピースボランティアに従事し、子どもたちと平和を考えるアクティビティを進行したりしました。
春からは報道記者として、情報を入手し、わかりやすく正しく素早く伝える仕事を担っていきます。私が記者を目指したきっかけには、長崎でのサービス・ラーニングの経験と出会いがありました。入学時から国際関係学を選考することを決めていた私は、国際連合や外務省といった国同士の関係の中で働くリーダーの役割に惹かれていました。2年生の時に「日本の歴史に目を向けたい」と思い参加したこのサービス・ラーニングで、長崎特有の平和教育のあり方や被爆だけではなかった「長崎の戦争」というものを目の当たりにし、長崎が今日まで経験してきた複雑な歴史に驚きました。活動中は、自分がいかに無知であったかということも、自覚する毎日でした。さらに、長崎大学核兵器廃絶研究センター長で、かつてICUで公共政策などを教えてくださっていた吉田先生にお会いし、朝日新聞の記者を長年勤めておられた時のお話と併せて、核抑止論についての深い学びを提供していただきました。吉田先生は、記者として国内外を取材され、国際社会および日本社会を自らの目で見てこられました。その実体験に裏打ちされた核抑止の取り組みから、現場をご存じの方だからこそ持つことができる大義が伝わり、感銘を受けました。
これらの経験から、はじめに持ち合わせていた世界全体や国家という大きな視点から、地域やそこに住む人々という小さな視点に、問題意識が変化していくのを感じました。政策決定の中枢に立つリーダーではなく、現場に身を置いて自分の足で人のために走り回る記者となり、経験によって構築された確固たる信念を持って、社会に貢献していく人間になりたいと思いました。
私は、サービス・ラーニングで、自身の専攻分野を見つめ直し、将来の指針を得ました。衝撃的な事実を知ったり、活動先で外部の人間となるポジショナリティを持つからこそ感じる葛藤を抱いたりと、楽しいと思うことだけではありませんでした。しかし、衝撃的なことも気持ちが揺らぐことも、それこそが良い経験であり、それらから目を離さないことが大切だと、改めて感じています。多くの人が訪問先に初めて身を置く環境を選ぶと思います。Tipsは、まずはその場所を存分に堪能して、活動していく中で感じる変化に気づくことです!
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大薮 さつき
2022年度桐朋小学校(東京都) にて活動
サービス・ラーニングは大学生活のハイライトと言っても過言ではありません。
桐朋小学校での活動は、小学校教員になりたいという漠然とした夢をもっていた私にとって、大変貴重な経験でした。現場に入り込み、ロールモデルとなる先生方にたくさん出会うことで、小学校教員の夢が具体的になり、さらに強く目指したいと思うようになりました。
桐朋小学校での活動のきっかけは、『これからの男の子たちへ―「男らしさ」から自由になるためのレッスン』という書籍で紹介されていた星野俊樹先生の実践を知ったことです。包括的性教育について知り、私の目指したい教育はこれだ!と思いました。星野先生のプロフィールには桐朋小学校勤務とあり、地図を見るとICUからとても近い位置に学校があると気づき、運命を感じました。
また、桐朋小学校の教育目標は「幸せな子ども時代のために」とあり、この教育目標に強く惹かれました。なぜなら日本の多くの教育現場では、子どもたちは未来に向かって常に努力を強いられる現状があり、子ども時代に子どもらしく成長することに重点を置いている学校はなんて素敵なのだろうと思ったからです。そして桐朋小学校で活動する度に、この目標が実践されているということを強く実感しました。
活動中は、主に5年西組さんのクラスでお世話になりました。5年生は「お互いが呼んでほしい名前で呼ぶ」という決まりがあり、私は苗字からとった「やぶやぶ」というニックネームで呼んでいただきました。
また担任の伊垣先生には、朝の会の5分間でアクティビティを通して子どもたちにメッセージを伝える「やぶやぶタイム」や「性の多様性に関する授業」など、さまざまな挑戦の機会をいただきました。
性の多様性に関する授業は「心と体の性の授業」と名付け、授業内容については星野先生に何度もアドバイスをいただきながら準備をしました。ある日の体育の授業で「男なんだからもっと速く走れよ」という発言があったことを切り口に、女らしさや男らしさ、そもそも性別はいくつあって誰が決めるものなのかという内容について子どもたちと一緒に考える時間をいただきました。授業では子どもたちが率直に意見を出してくださり、感想アンケートでは「性に関する認識が変わった」という意見を書いてくださる方もいました。
5年西組の皆さんとは、週4日、長いときには1日中一緒にいることができ、先生方には見せない顔もたくさん見せていただきました。「先生」でもなく「ちょっと年上の人」という関係性で、活動中のピンチの際には助けていただきました。また関係の構築の中で私は「褒める」「ポジティブな言葉かけをする」という手段しか知らず、ある時西組の数名の方に「お世辞言わなくていいよ」「無理に褒めなくていいよ」と言われてしまい、すべてお見通しなんだなと頭が上がりませんでした。
5年西組での活動最終日には、お一人おひとりからのお手紙が綴られた冊子をいただきました。輪になって、私の活動に対するコメント、アドバイス、激励のメッセージをお一人ずつ読み上げてくださいました。中には「やぶやぶが先生になるために」という内容で「いつもニコニコしていて良いと思います。褒めすぎには注意です。でも、やぶやぶならきっといい先生になれると思います。応援しています」というメッセージをくださる方がいて、大号泣でした。
サービス・ラーニングの活動終了後、現在もボランティアとして桐朋小学校で大変お世話になっています。さまざまな行事にもご招待いただき、桐朋小学校ならではの教育を知り、自分の公立小学校時代と照らし合わせて刺激や学びをいただいています。
ICU卒業後は、卒論でとりあげた母校の卒業生を訪ねるために全国各地を旅する予定です。過去に受けた教育が人生にどのように影響を与えているのか、多くの人生を記録し、自身が教育に携わる際に参考にさせていただきたいと考えています。その後、秋からは東京にある通信大学で小学校教員免許の取得 のための学びを始める予定です。多様な社会経験を積みながら、小学校教員の夢の実現を目指していきたいと考えています。そして、いずれは桐朋小学校でいただいた多くの経験を生かし、目の前の子供たちが性を含む様々な自分のあり方で子ども時代を精一杯生きることができる環境作りをしていきたいと考えています。また、子どもたちと共に学び合いながら、より良い社会づくりに挑戦していきたいです。
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SL センター長からのメッセージ
加藤 恵津子 教授
文化人類学
サービス・ラーニング・センター センター長
サービス・ラーニング(SL)プログラムという畑にとって、〈秋冬〉はどんな季節でしょうか。実は〈夏〉に育った作物の収穫と、次の〈春〉の種まきに向けた準備で大忙しです。振り返りの授業や成績評価が終わればすぐ、次年度に向けたプログラム改訂や応募者の審査が始まります。また海外パートナー大学からのSL留学生受け入れ(JSL)や、300番台科目などの「多毛作」が行われ、畑が休眠することはありません。そしてSL畑は楽園ではありません。困難を抱えた人のもとへ、人生経験も知識も少ない学生がわざわざ出かけていき、心身ともにチャレンジを受けます。しかしこの畑からたくさんの養分を吸った学生は、それぞれ色も形もまったく異なる野菜になり、教室だけで学んだ人とは異なる「味」を、世界というサラダボウルに加えていきます。今年度のSL参加者の皆さん!バトンを次世代に渡しつつ、メジャーの学びとキャリアでいい味を出してください。
編集後記
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幼少期は転校続きで、いつも別れを予感しながら育ちました。だからこそ、ICUで卒業式を「Commencement」と呼ぶことに心惹かれます。終わりではなく、始まり。ここで結ばれたつながりが、新たな出会いへと続いていきますように。
高校を卒業して親元を離れた春。初めての一人暮らしは自由な反面、生活すべてに責任を持つことの大変さを知りました。周りにどれだけ支えられていたかに気づき、感謝の気持ちが芽生えました。
大学入学で上京した日。キラキラした東京での生活に胸躍る気持ち。初日の夜の地震に震えながら、頼れる家族がそばにいないという現実を本当の意味で実感した心細さと小さな決意。いくつもの感情が入り混じったあの気持ちを、この季節になると鮮明に思い出します。
春の訪れとともに、私にも恒例の旅立ちの季節がやってきます。冬を離れ、花粉という見えない敵との新たな戦いへ――まったく望んでいない旅路ですが、毎年の通過儀礼だと思い、静かに覚悟を決めています。
卒業を控え、進路は決めたものの、そのためにはさらに遠くへ行かねばならず、まだ回復途中の母を残して離れるのは親不孝ではないかと迷っていた私。その背中をそっと押してくれた恩師の言葉を、旅立ちの季節になると思い出します。




