2022年度冬学期

coverbanner2022w.jpg

Topics

Contents

  • 「就職・進学とサービス・ラーニング」卒業SLアンバサダー
  • 卒業生の声
  • 「3つの学び方」西尾 隆 教授
  • 「コーディネーターの振り返り」横手 仁美先生
  • SL センター⻑からのメッセージ
  • 編集後記「新年度の抱負」

「就職・進学とサービス・ラーニング」卒業SLアンバサダー

Omine-Anna.jpg大嶺 杏奈 OMINE, Anna

2021年度 Silliman University

進学とサービス・ラーニング

私は2021年、国際サービス・ラーニングでフィリピンのプログラムに参加しました。私が高校生の頃、行きたい大学が決まらず、進路に迷っていた時、SLに興味を持ち、ICUに入学することを決めました。そして、大学3年の夏、オンラインを通してではありましたが、現地の方々からフィリピンの抱える様々な課題や現状を学び、子どもたちとアクティビティを通して交流しました。とても学びの多い、充実した1ヶ月間であったと同時に、プログラムを通し、自分がいかに無知で盲目であったかに気付かされました。この経験から、もっと学びたいという思いが強くなり、学部卒業後はICUの大学院で国際関係学の学びを継続することに決めました。

 振り返ってみると、SLはいつも私の進路選択に関わる、とても大きな存在であったたと感じます。貴重な学びを与えてくれたこのプログラムに感謝すると同時に、プログラムに関わって下さった全ての方々に感謝します。今後も勉学に励み、いつかフィリピンを実際に訪れ、このプログラムで出会った方々と会うのが私の目標の一つです。

卒業生の声

Ito-Yumeka.jpg伊藤 夢香 ITO, Yumeka

2018年度 Petra Christian University
東京国際空港(羽田空港) 国際線地上職

現在とSL経験を振り返って

2018年開催のSLに参加し、インドネシアでインドネシア、オランダ、韓国、中国の学生と共に村のニーズを満たす為に幾つかのプロジェクトを実施しました。

言語、文化、価値観の相違などがあり、異国の地で初対面の仲間と1か月間泊まり込みでプロジェクトを進めることは想像以上に難しく、自分たちの活動の意義やポジショナリティに悩むことも多かったです。しかし、チームメンバーとの活動や村での滞在を通して自分の先入観に気づかされ、価値観や人生観が大きく変えられた貴重な経験でした。また、村に貢献できたことよりも学ばせてもらったことの方が多く、活動を通じて得た答えよりも新たに出会う問いの方が多かったです。

帰国後は、インドネシア語、宗教、東南アジアの政治など、SLを通じて興味を持った分野の講義を幅広く受講し学びを深めました。

ICU卒業後の現在は、羽田空港の国際線で地上職員として勤務しております。毎日多種多様な国籍、目的、行き先のお客様の離発着手続きを行う上で、SLでの体験や学びから得た各国の文化、政治的背景を学び、個々の多様性を理解しようとする力が活かされているように思います。今後もSLで学んだ現場で体験し、問いを見つけ、考え、学び続ける姿勢を大切に、更なる夢や目標の実現に向けて日々を歩みたいと思っております。

Ito-Yumeka2.jpgIto-Yumeka1.jpg

Yagi-Ayumu.jpg八木 歩 YAGI, Ayumu

2017年度 Union Christian College
神戸大学大学院 国際協力研究科 博士後期課程

SLを振り返って

「海外で働きたい」「子どもたちのために何かをしたい」という漠然とした想いから国際協力に関心を持っていた私は、大学2年生の夏にSLプログラムでその第一歩目を踏み出します。インドの人々の暮らしを見て、聞いて、感じた一ヶ月間は、私にとって新鮮で刺激的な体験でした。一方で、「発展途上国の貧しい子どものために働きたい」という意気込みとは裏腹に、何にも残せなかった無力感にも直面しました。知識もスキルも持たない私では、人や社会に貢献できないのだと痛感し、専門性を磨くために大学院への進学を決意。教育経済学を専攻し、教育を定量的に捉える考え方やスキルを学びました。当初は現場でバリバリ働く実務家を目指していた私ですが、だんだんと実務家をエビデンスで支える「研究」の魅力へと惹かれていきます。そうした経緯で修士課程を修了した現在も、博士課程に在籍し、研究を続けています。

インドに行くと人生観が変わるというハナシを耳にすることがあります。しかし、私にとっては「SLプログラムで」インドに行ったことが、大きな方向転換をもたらしました。何者でもなかった私自身に気付かせてくれたSLを振り返るたびに、今の私なら何ができるだろうかと考えます。当時の無力感を忘れずに、一歩一歩、今後も前進していきたいと思います。

Yagi-Ayumu2.jpgYagi-Ayumu1.jpg

Fujimoto-Yuri.jpg藤本 佑里 FUJIMOTO, Yuri

2018年度 Petra Christian University (SLR205)
2019年度 The Amity Foundation (SLR305)
47株式会社 営業部

私は二度サービス・ラーニングに参加しており、2018年にはインドネシアのMojokertoにて現地のインフラ整備の手助けや学校教育など、2019年には中国の南京にて、高齢者施設や児童施設など、様々な活動を行ってきました。

サービスラーニングでの経験はICU生活で最も学びが多く、且つ自分のターニングポイントとなった経験でした。当時まだまだ世間を知らずではありましたが、二度のサービス・ラーニングから、その地域ならではの繋がりや温かさ、文化の違いを否定せず寛容である姿勢を肌で感じることが出来ました。

現職では、不動産仲介業に従事しておりますが、日本の不動産を借りることがいかに外国人にとって不寛容で難易度の高いものか、日々痛感しています。そういった日本で不動産を借りようという外国の方々に満足頂ける物件に入居頂けるよう、少しでも不動産オーナーに偏見無く、理解してもらえるように、取り組んでいます。

Fujimoto-Yuri2.jpgFujimoto-Yuri1.jpg

「3つの学び方」

Takashi-Nishio.JPG西尾 隆 教授

国際基督教大学特任教授 行政学(2023年3月退職)
元サービス・ラーニング・センター長(2005~2007 年、2015~2017 年)

1999年のコミュニティ・サービス・ラーニング開講以来、地方自治論を教えていた関係でこのプログラムにかかわることになり、私自身も多くを学ばせていただいた。S-Lの出発点には体験学習(learning by doing)の考え方があるが、単なるボランティアと区別する意味でふり返り学習(learning by reflection)の大切さもよく強調される。だが、自らの学びについていうと、観察学習(learning by observation)の要素が大きかったと感じている。

フィリピンのシリマン大学で活動した際、ハビタットに割り当てられたグループは、到着時に住宅建設が終わっていたため失業状態になり、助けをもとめられた。同大の社会学の教員から、では世帯を回って聞き取りをすればと提案され、親密な土地柄もあってコミュニティを体験する貴重な活動になったようだった。仕事が少ない、単調だといった悩みは国内外を問わずよくある話で、私は職場の様子をよく観察し、記述するよう伝える。すると、今どきファックスの多用とか、壁の啓発ポスターが時期外れとか、体験談とは異なるクリティカルなリポートが出てきて面白い。

どの土地や施設でも、訪問時にツアーが企画されていて最初の効果的な学びになる。墨田区の福祉施設・興望館では、いつも駅から施設まであちこち寄り道をして案内して下さり、地域の歴史や個性の学びになる。施設内を回ると、子どもやお年寄りへのスタッフの接し方、館長さんの自然な声かけに印象づけられる。ここでの活動を終えた学生が、"God is first, you are the second, I am the last"という壁の標語を見つけ、興望館はまさにそんな所だったと記していた。

ふとした観察から得られる学びは小さくない。実際の活動と、ふり返りによる学びとを、注意深い観察が媒介してくれることも私の学びの一つだった。

Takashi-Nishio1.JPGTakashi-Nishio2.jpg

左:2016年8月オープンキャンパスのモデル授業、右:2007年夏インドでの国際S-Lモデルプログラムで

「コーディネーターの振り返り」

Yokote.jpg横手 仁美先生

国際基督教大学サービス・ラーニング・センター コーディネーター・講師(2023年3月任期満了退職)

国際サービスラーニング(ISL)担当の横手です。2023年3月末で退職するにあたり、振返りをしたいと思います。ICUのISLはアジア圏を中心にパートナー機関へ学生を派遣してきましたが、近年は他地域にも派遣先が広がり、2022年は対面で南アやガーナでのISLが実現しました。私は新規に南ア、ガーナ、アルゼンチン、インドネシア(ダリケー)などに関わらせてらいました。新しいプログラムを作ることは情報収集、受入先とのコミュニケーション、詳細な確認作業等があり、手間と時間がかかります。時差や文化の違いなどを乗り越えて、一緒につくる喜びや、学生の学びの広がりなどを目にすることができると、やりがいを感じます。ISLは原則引率者は不在なので、プログラムの実行、学生派遣には、パートナーとの信頼関係の構築が不可欠です。今後も海外に興味をもちISLに参加するICU生が絶えないことを願います。そして、海外での学びを日本を含めた世界の問題解決に活かして欲しいと思います。

IMG_2368.JPG

SL センター⻑からのメッセージ

2022_NishimuraM.jpg西村 幹子 教授

教育社会学・国際教育開発 (2023年3月センター長 任期満了)

「サービス・ラーニングは社会に貢献しているのか」

 サービス・ラーニング(S-L)は社会に貢献しているのか。自発的に行うボランティア活動に単位を付与することは矛盾しているのではないか。いや、むしろS-Lを必修とすべきか。S-Lは学術的な学びとリンクしてこそ意味があるのではないか。深い学びが得られるS-Lをどのように設計することができるか。これらは、過去4年間を通して国内外のさまざまなパートナー機関や大学教員との対話の中で出された問いでした。S-Lを通してさまざまな人と関わり、失敗を含め、自分と社会を見つめる経験をすることが、一人ひとりのその後の人生に大きな影響を与えることには疑いの余地がありませんが、大学はもっと大きなところを見据える必要もあります。社会的な課題を常に意識しながら大学の存在を社会にどう位置付けるのか。大学の教育、研究、社会的なサービスという3つの役割を切り離すのではなく、繋げる役割がS-Lにはあると思います。3人に一人はS-Lを履修して卒業する日が来ますように。

編集後記「新年度の抱負」

HY.jpg2023年4月からはICUを離れることになりますが、生涯学習者としてサービス・ラーニングの旅を続けたいと思います。
今までお世話になり、ありがとうございました。皆さまのご多幸を祈念しています。

KI.jpg3月から8月まで、たくさんの充実したプログラム(!)が待っているので、一つ一つ頑張りたいと思います。
 

YS.jpg2023年度は新しいプロジェクトが始まることもあり、私にとって「挑戦」の一年になりそうです。
力みすぎないよう、がんばりすぎないよう、心の平安を意識したいです。

YY.jpgなかなか行動を起こす第一歩が踏み出せずに時間だけが過ぎてしまった昨年。
今年は先延ばしにせず興味のあることにチャレンジする、フットワークの軽い一年にしたいと思っています。

MS.jpg昨年は多くの授業や課外活動に参加する学生が燃え尽きている姿を目の当たりにした。
これは自分にも言えることで、しっかりタイムマネジメントを意識して業務と向き合いたい。